一流のキャッチャーは打者のどこを観察しているのか。
古田敦也氏のプレゼンショーから見えた「キャッチャーの目線」
■一流のキャッチャーの視線の先にあるもの
指導者はその構えのメリット、デメリットを理解したうえで、選手がどういうバッターを目指しているのかに合わせて指導しなければいけない。それが古田氏の伝えたいことである。「脇」の例でいえば、強い打球を打ちたいのであれば、脇を空けておいた方がいい、と考える。そういう選手に向かって「脇を空けてはいけない、締めなさい」と指導はできない。
さまざまな名選手のバッティングフォームを真似ながら、そのメリット、デメリットを指摘していく古田氏の言葉には説得力があった。
このイベントで一番驚かされたのが「キャッチャーの目線」だ。メインテーマではないものの古田氏がいかに打者を観察し、構えからその心理を読み取っていたのかが、バッティングの指導論から垣間見えた。冒頭に紹介したのがその一例である。
「つま先は真っ直ぐに。外側に『ハの字』になるのはもってのほかで、内側に入るのも避けたほうがいい」
「脇」の例と同じように、これもバッティングフォームに関して言われ続けたことだ。これに対して、古田氏はメリットとデメリットをこう分析する。
「確かに外側に『ハの字』になるのは良くない。打撃の際、体を捻って戻す(腰を回す)、という動作を考えたとき、(つま先が)外側に向いていると(捻った後)体が戻ってこないからです。逆に、(つま先が)内側に入っていれば早く腰が回る」
そしてこう続ける。
「でも、プロ野球選手にも『外側にハの字』で構える選手がいます。それは、腰を回したくない選手。つまり、反対方向に打ちたいバッターです。(キャッチャーから)バッターボックスでそれを見たら、この選手は反対方向を狙っているなと考える。逆に内側に入っている選手は強い打球を打ちたい、引っ張りたいと考える。だから僕がバッターボックスに立つときは、内側に入れておいて、ピッチャーが足を上げた瞬間に外に向ける、ということをやっていた」
野球中継を観ていると、バッターボックスで構えを取るバッターの姿を、キャッチャーが下から上へとなめるように観察しているシーンを見かける。どんなポイントを見ているのか、ずっと疑問だった。果たして構えだけを見て、何がわかるのだろうか、と。
一流のキャッチャーは「構え」を見ているだけではなかった。バッティング理論を用いて「構え」から見えてくるバッターの心理を読み取っていたわけだ。これがすべてではないだろうが、新たに野球の見方を教えてくれる「14分×4回」だった。
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